グリーンビルディング認証は、広くユニバーサルに用いられているものから、国や地域ごとに特化されたものまでさまざまです。発注者が建設プロジェクトへ期待する要求水準やその特性に応じた適切な認証システムの選択が重要です。本記事では、主要な認証システムの比較や認証取得のプロセス、そしてPlus PM Consultantの主戦場であるマレーシアのGBIなど、わかりやすくまとめてご紹介します。
グリーンビルディング認証システムの概要と地域特性
グリーンビルディング認証は、建築物の環境性能を評価・認証する制度です。気候条件や建築文化、環境規制などが国によって異なるため、各国・地域で独自の認証制度が発展してきました。アメリカのLEED、イギリスのBREEAM、シンガポールのGreen Mark、そしてマレーシアのGBIなど、それぞれが地域の特性を反映した評価基準を持っています。認証システムが国境をまたぎ、広範のエリアで普及されているものもあります。多くのエネルギーの利用を占めている建設産業において、環境配慮へのトレンドはプロジェクトにも組み込まれることがもはや常識となってきています。
主要な国際認証システム
LEED(アメリカ)

エネルギー効率と革新的な設計に重点を置き、世界でもっとも広く採用されている認証システムです。2023年時点で、認証取得建物は累計で20万件を超えています。新築、既存建築物、インテリア、近隣開発など、さまざまな用途に対応しています。
BREEAM(イギリス)

欧州でもっとも普及している認証で、建物のライフサイクル全体における環境負荷の低減を重視します。特に材料選定や廃棄物管理に関する基準が厳格で、循環型経済への貢献度を重要視しています。
Green Mark(シンガポール)

熱帯気候に特化した評価基準を持ち、東南アジアの気候条件に適した環境性能評価を提供します。同国では現在、政府の建物の新築・改装入札についてすべて、Green Markのプラチナム・超低エネルギー基準と、メンテナンス基準を満たす必要があります。
GBI(マレーシア)

マレーシア建築協会(PAM)他が共同開発した環境評価指標で、現地の建設事情や気候条件に合わせた独自の評価基準を採用し、特に熱帯地域での省エネ性能に焦点を当てています。
ZEB (日本)

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は、日本発の環境性能評価システムで、建築物のエネルギー消費量を実質ゼロにすることを目指します。省エネルギーと創エネルギーの組み合わせにより、年間の一次エネルギー消費量を正味でゼロ以下にすることを評価基準としています。2020年以降、政府の支援策も充実し、特に公共施設やオフィスビルでの採用が増加しています。
CASBEE(日本)

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能を「環境品質・性能(Q)」と「環境負荷(L)」の2つの要素から総合的に評価する日本発の認証システムです。特徴的なのは、建築物の環境効率(BEE:Built Environment Efficiency)を「Q/L」という形で数値化し、S(excellent)、A、B+、B-、Cの5段階で評価する手法です。新築、既存、改修時それぞれの用途に対応し、2001年の開発以来、日本国内の多くの地方自治体で評価ツールとして採用されています。
認証取得のメリットと事業価値
環境性能の客観的評価
第三者機関による認証は、建築物の環境性能を客観的に定量的なスコアによって証明し、国際的な評価基準との整合性や環境配慮への貢献度を示す重要な指標として活用することが可能です。
経済的メリット
発注者が掲げる環境憲章に対するバックアップ、運用コストの削減、不動産価値の向上、テナント誘致での優位性など、具体的な数値例を含めた経済効果があります。
法規制対応と優遇措置
多くの国で環境認証の取得に応じた税制優遇や補助金制度が整備されており、事業計画に大きく影響します。マレーシアでも同様の優遇措置があります。
マレーシアのGBI認証システムの特徴
GBIの概要と特徴
マレーシアの気候条件や建設事情に特化した評価基準を採用し、共通評価項目と地域特性評価項目から成るLEEDの評価体系をベースとしながら、GBIでは特に熱帯気候下における省エネ性能と持続可能性に焦点を当てています。
評価項目と配点
評価は以下の6つの主要カテゴリーで構成されています。
カテゴリー | 点数 | 概要 |
エネルギー効率 | 35 | 空調効率、自然換気の活用、日射制御など |
室内環境品質 | 21 | 温熱環境、空気質、採光、音環境の最適化 |
持続可能な配置計画 | 16 | 生態系への配慮、雨水管理、ヒートアイランド対策 |
材料と資源 | 11 | 地域材の活用、リサイクル材の使用率 |
水効率 | 10 | 節水システム、雨水利用、中水利用 |
イノベーション | 7 | 先進的な環境技術の採用 |
認証レベル
認証は達成度に応じて4段階に分類されます。
認証 | 点数 | 概要 |
プラチナ | 86点以上 | 最高レベルの環境性能 |
ゴールド | 76点以上 | 高度な環境配慮 |
シルバー | 66点以上 | 標準以上の環境性能 |
認証 | 50点以上 | 基準を満たす基本的な環境性能 |
申請プロセスの特徴
GBI認証プロセスは、主に次の3段階から構成されています。
- 申請および登録
- 設計の査定
- 完了および確認の査定
この3段階のプロセスでは、認証発行元の検査員が現地確認に訪れ、エネルギー効率、室内環境品質、持続可能な配置計画、資材と資源、水効率、ならびにイノベーションについてGBI規格に適合していることを認定します。
認証取得プロセスと実務上の留意点
事前評価と申請準備
プロジェクトの初期段階では、どの認証システムによる評価取得をターゲットとするかから始まり、目標とする認証レベルの設定、認証取得に伴うコストの試算を行います。同時に設計・施工スケジュールへの影響を評価し、プロジェクトを遂行するために必要な専門家チームを編成します。これらの準備作業は、その後のプロジェクトの円滑な進行に大きく影響するため、慎重な検討が求められます。
設計・施工段階での対応
設計・施工段階では、各認証システムの要求事項に基づいた綿密な対応が必要となります。具体的には、環境性能シミュレーションを実施し、その結果に基づいて材料や設備の選定と性能検証を行います。また、施工品質の管理と記録を徹底し、建物の性能を確実に担保するためのコミッショニング計画を立案・実施します。
コスト管理とスケジュール
認証取得に関連するコストは、プロジェクトの規模や複雑さによって大きく異なるため、プロジェクトの初動で明らかにする必要があります。また、環境性能を高めるための追加的な設計・施工費用が求められることを認識し、プロジェクトの初期段階でどのような環境配慮対策を実施するかおおまかに具体化させ、適切に見積もり、予算計画に組み込むことが重要です。
コストとスケジュール管理については、以下の記事をご参照ください。
まとめ
グリーンビルディング認証の取得は、建築物の環境性能を高めるだけでなく、完成した建物の価値向上にも大きく貢献します。ただし、建設地域やプロジェクトの特性を考慮した適切な認証システムの選択と、現地の建設事情に即した取得プロセスの管理が重要です。
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