品質管理は完成した建物の運用開始後、特に顕著にクライアントのビジネスへ影響を及ぼします。そのため、プロジェクトの各段階で品質を確保するための適切な管理が必要です。本記事では、クライアントの視点に立って、品質管理の基本的な概念から実践的なポイントまでをご紹介します。
建設プロジェクトにおける品質管理(QC)とは?
建設プロジェクトにおけるQC (Quality Control)とは、計画された品質要件を実行するための一連の活動を指します。ISO 9001:2015は、建設QCを「要件と適用される規定を満たす成果物を提供するために必要なプロセス」と定義しています。
具体的には、品質要件の明確化からQC計画の策定、定期点検、記録管理、継続的な改善活動まで、プロジェクト全体でPDCAサイクルを回すという包括的なアプローチが必要です。
施工段階を例に挙げると、QCの主な活動には次のようなものがあります。
- 材料の入荷検査と品質確認
- 施工状況の日々の確認
- 出来形・出来高の測定と記録
- 品質記録の作成と管理
QCと品質保証(QA)の違い
一定の品質を達成するためには、QCと密接に関連するもう1つの本質的な明確なアプローチ、すなわちQA (Quality Assurance)を無視することはできません。
QAとは
QAは適切な品質のシステムを構築することを目的としています。具体的には、QCシステムの確立と運用から、教育・研修の実施まで多岐に渡ります。QAはプロジェクト全体を通して一貫した品質基準を維持するための体系的なアプローチです。主な活動には次のようなものがあります。
- 品質管理システムの構築・運用
- 品質基準の設定と文書化
- 教育・研修プログラムの実施
- 品質監査による定期評価
- プロジェクト品質計画の策定
- 検査および試験計画(ITP)の作成
相互の関係を整理すると、QAはシステム全体を監督し、QCは具体的な確認作業を担うことで、互いに補完し合っています。
クライアントの役割
クライアントは、特にQAにおいて重要な役割を果たします。
まず、クライアントがプロジェクトで何を目指しているのかを明確に定義し、これを関係者全員と共有することが重要です。
次に、測定可能な方法でQCシステムをどのように確立するかが重要です。これには、QCワークショップの組成、責任分担の明確化、プロセスを図解で示すことが含まれます。
関係者が実施するすべての活動を適切に監督し、必要に応じて改善を促すことでQAのPDCAサイクルを運用します。
建設QCにおける8つの重要ポイント
1. 必要な品質の明確化
プロジェクトの開始時に、必要な品質を具体的かつ明確に定義することが重要です。この段階では、法律や業界基準による制約などの基本的な要件に加えて、プロジェクト特有の要件を詳細に特定する必要があります。例えば、コンクリートの強度や床の平坦度など、具体的な数値目標を設定することで、QCの効果を高めることができます。
また、必要な品質を設定する際には、建物のライフサイクル全体を考慮することも重要です。建設時の品質だけでなく、維持管理や将来的な改修を考慮した要件を設定することで、建物の長期的な価値を担保できます。
2. QC計画の評価
QC 計画は、必要な品質を達成するための具体的な対策を提供します。特に、評価にあたっては、以下の点に留意してください。
- QCシステムの適切性
- 検査・試験方法の妥当性
- 記録保持方法の適切性
- 不適合管理プロセス
評価にあたっては、単に内容を確認するだけでなく、計画の実現可能性や効率性も必要な基準として扱うべきです。現場の実情に即して計画が効果的であるかどうかを慎重に検討することが重要です。
以下の記事も、建設プロジェクトにおける実現可能性調査に関して参考になるでしょう。
【建設プロジェクトにおけるフィージビリティ・スタディ】必要十分条件の整理・制約条件の調査・予算の組立・事業期間の検討
3. 現地での徹底した品質確認
QC計画 に基づき、品質チェックを着実に行うことが重要です。 日々の品質確認活動の一環として、作業開始前の状況確認や進捗確認は欠かせません。
品質チェックの結果を適切な形で記録し、保存することにも意味があります。特に、写真や測定データなどの客観的な記録は、後の品質認証や問題解決において重要な役割を果たします。
4. 建設品質の見える化
現在進行形の状況を可視化することで、関係者間での情報共有が容易になり、問題を早期に発見して対処できます。 昨今では、デジタルツールを用いたQC手法が広く普及し、タブレット端末による検査の記録や、クラウドシステムによる情報共有等が一例として挙げられます。
QC計画との不適合が発見された場合は、不適合報告書(NCR)による修正指示を発行し、指示を受けた者による適切な是正措置を取らなければなりません。この際、問題の詳細や原因、対策を明確に記録し、類似する問題の再発防止につなげていきます。
5. 不適合管理の徹底
品質に対する不適合が発覚した場合、問題が深刻化しないよう迅速な対応が求められます。不適合管理とは、問題の特定から是正措置の実施、そしてその効果の確認まで、一連のプロセスを経ることを指します。単に問題を修正するだけでなく、根本原因を分析し、再発防止策を検討することが重要です。
さらに、発見された不適合を類似のプロセスや他の現場に横展開することで、プロジェクト全体の品質レベルを向上させることができます。これにより、プロジェクト全体の品質基準を高めることが可能になります。
6. ステークホルダー間の効果的なコミュニケーション
QCでは、ステークホルダー間の円滑なコミュニケーションが求められます。定期的な品質会議を開催し、日々の情報を共有する仕組みを構築することが重要です。重要な品質に関する決定が必要な場合には、関係者全員が集まり、統一された理解を得るために議論を行うことが望ましいです。
デジタル化されたプロジェクト管理システムとコミュニケーションツールは、情報を共有し、タイムリーに記録を保持するのに役立ちます。
7. モックアップとサンプルの確認
重要な仕上げ材料や特殊な施工方法については、実物大のモックアップやサンプルで事前に確認することが有効です。これにより、図面や仕様書だけでは伝わりにくい品質レベルをステークホルダー間で具体的に共有することが可能となります。
また、モックアップは施工方法や作業手順を検証するためにも活用できます。特に複雑な組み合わせや新しい施工方法を採用する場合には、モックアップを用いた事前の検証を行うべきです。
8. ライフサイクルコストを最適化するQC活動
QCは建物のライフサイクルコスト(LCC)にも大きな影響を与えます。適切なQC活動への投資は長期的なLCCの低減に直接つながります。
QCとQAのPDCAを建設段階で終わらせず、運用段階における計画的な維持保全や、後発する新規テクノロジー導入などの将来的なアップグレードを見据えた改修計画を視野に入れることも、クライアントの資産価値を最大化するうえで欠かせない視点です。
まとめ
建設品質管理は、プロジェクトを成功に導く上で重要な役割を担っています。適切な専門家によるサポートを活用することで、より効率的に品質管理を実行することができます。
プロジェクトのいかなるステージにおいても、経験豊富なプロジェクトマネジメント会社にであるPlus PM Consultantへお気軽にご相談ください。
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