*2023年9月19日更新(2021年11月9日公開)
「マレーシアにおける建築申請の流れがわからない」
「建築申請の全体像が知りたい」
そんな疑問や不安をお持ちではありませんでしょうか?
前回までに、マレーシア建設許認可申請の進め方、開発申請(DO申請)、消防申請(BOMBA申請)についてお話をしてきました。今回は、マレーシアの建築申請のプロセスにおける建築申請の流れ(BUILDING PLAN)について解説致します。
本記事は、マレーシア・クアラルンプールで建設コンサルタントとしてプロジェクトマネジメント、コンストラクションマネジメントを提供し、企業様のアセアン進出・事業拡大を支援するPlus PM Consultant Sdn. Bhd.が作成したものです。
BP申請とは?
BPとは、BUILDING PLAN SUBMISSION の略であり、日本で言うところの建築確認申請に該当します。各自治体の建築課によって、LAWS OF MALAYSIA UNIFORM BUILDING BY-LAWS(通称UBBL:日本の建築基準法にあたる法律)に準拠しているか審査されます。
かつてマレーシアでは、DO申請(開発申請)はPlanning Department、BP申請(建築計画申請)はBuilding Departmentと各部署が別々に審査を行っていたことから非常に煩雑でしたが、2007年のOSC(ONE STOP CENTRE)設立により手続きが簡略化されました。しかし、それでも各州によっては、申請書類への指導内容・申請手続き、申請期間が異なることから、不透明な点も多くあります。
特に、東マレーシアと西マレーシアは同じ国内でも大きく異なり、ひとつの例として、西マレーシアの設計者(アーキテクト)は東マレーシアの設計申請が出来ないことも挙げられます。
BP申請の位置づけ
マレーシア国内で建築を行う場合、日本と同様に建築確認申請の手続きを行う必要があり、一般的に以下STEP1~8の流れで行います。BP申請はこのうちSTEP3に該当します。
STEP1 | 土地売買契約/引渡し SALES AND PURCHASE AGREEMENT(SPA)/HANDOVER |
STEP2 | 開発申請及び承認 DEVELOPMENT ORDER SUBMISSION & PERMISSION(DO申請) |
STEP3 | 建築計画申請及び許可 BUILDING PLAN SUBMISSION & APPROVAL (BP申請) |
STEP4 | 各省庁許可 SUB-DIVISION APPROVAL |
STEP5 | 工事着工承認 BUILDING COMMENCEMENT PERMISSION |
STEP6 | 建築完了証 CERTIFICATE OF PRACTICAL COMPLETION(CPC) |
STEP7 | 役所検査 AUTHORITY INSPECTION |
STEP8 | 完了及び法準拠の証明 CERTIFICATE OF COMPLETION & COMPLIANCE(CCC) |
申請手続き・図書名称は異なりますが、全体の流れは日本と類似しています。
また、BP承認を経て工事着工までにかかる期間は、BP申請から3か月程度が一般的です。
BP申請書類の種類は?
(1)申請図書
まずは申請図書ですが、用意する図面は配置図、平面図、立面図、断面図、詳細図などになります。
(2)チェックリスト
次にチェックリストです。チェックリストは BP 申請の際に、アーキテクトが確認した内容を One Stop Center(以下OSC)がチェックするための書類で、以下の項目があります。
- 提出図面の図面基準 PLAN REQUIREMENTS – [by-law 8(1)]
- 図面表記ルール PLANS FOR ALTERATION WORKS – [by-law 10]
- 図面記載表記基準 NOTE IN THE DRAWINGS:
- 設計基準のチェック REGULATION [by-laws 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39 or 40]
- 消防避難経路のチェック(避難経路・距離・階段・避難アクセス) BOMBA PASSIVE
- 関連部署書面及びレター SUPPORTING DOCUMENTS REQUIRED
(3)Form AもしくはForm B
最後にFormと言われる書面です。FormにはA~Gまでありますが、BP申請時に提出するのは新築工事の場合がForm A、増改築工事の場合Form Bとなります。Form C以降は着工時、完了時など随時提出していきます。
- Form A: CERTIFICATE OF BUILDINGS/STRUCTURAL PLANS
これは、C&Sコンサルタントが作成する書面で、新築の構造設計について法規遵守している事を記載します。 - Form B: CERTIFICATE OF STRUCTURE
これは、C&Sコンサルタントが作成する書面で、既存建物の調査、解析、安全性を確認した旨を記載します。増改築の場合に用いられます。
※図版:From A書面
プロジェクトへの参画が必要となるコンサルタント
マレーシアにおける建設プロジェクトで参画するコンサルタントは以下のメンバーとなります。
アーキテクト(設計者) | BP申請の窓口となり、C&SコンサルタントやM&Eコンサルタントを統括する立場となるケースが多いです。敷地基本計画、平面計画を作成し、Superintendent Officer(設計監理者:以下S.O)としての役割を果たします。 |
C&Sコンサルタント(土木・構造設計者) | 敷地内外の公共施設整備、構造設計が必要な図面を作成します。 |
M&Eコンサルタント(設備設計者) | 敷地内外の電気・給排水・電話等の設備インフラ条件及び消防申請用設備図面を作成します。 |
BP申請の流れについて
アーキテクトはBP申請を行うために、OSCと呼ばれる地方自治体窓口にオンライン申請をし、申請後、書類をOSCへ提出します。
次に、地方自治体の建築課が内容を確認し、関連部署にコメントを求めます。関連部署は建築内容をチェックし、コメントを建築課にフィードバックします。フィードバック内容は、毎月1~2回程度役所内で開かれる建築承認委員会で審議されます。
特に指摘が無ければ承認されますが、指摘があれば申請書類の修正を行い、承認されるまで再申請をします。
最終的に、議会承認・許可・各省庁許可の取得後、工事着手届を提出し、工事着工承認を取得します。これにより工事を行うことが出来ます。
プロジェクトマネジャーからのアドバイス
申請スケジュールは、事業の稼働時期に大きく影響します。各州の指導・申請の特性を正しく理解し、最適なスケジュールを組むことで、事業を遅滞なく稼働することができます。
役所申請スケジュールを短くするために、OSCにDO申請だけでなく、BP申請を同時に申請することができます。日本で言うと開発申請時に確認申請を同時に申請する事ができると考えて頂ければ良いでしょう。
BP申請に限らず、各種申請業務においてどのように進めたらよいのか、少しでも不安、煩雑さを感じることがありましたら、マレーシアの建設事情に詳しい専門家にご相談することをお勧めします。
結論、まとめ
- BP申請とは、BUILDING PLAN SUBMISSIONの略であり、建築確認申請に該当する
- BP申請期間は3か月程度が一般的
- BP申請は通常、アーキテクトが図面や図書を準備し申請を行う
- アーキテクトはBP申請を行うために、OSCと呼ばれる地方自治体窓口にオンライン申請をし、地方自治体の建築課が内容を確認し、関連部署による承認後、BP Approvalが発行となる
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本記事はPlus PM Consultant Sdn. Bhd.がマレーシア現地の取材、および以下参考・参照の情報をもとに作成しています。
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