建設リスクアセスメント実践ガイド:プロジェクトを成功に導く進め方

12月 12日, 2024

Risk Management and Assessment for Business Investment Concept. Modern graphic interface showing symbols of strategy in risky plan analysis to control unpredictable loss and build financial safety.
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建設プロセスにおいて、品質、コスト、スケジュールなどの主要因子に関して関係者は大小様々なリスクに直面します。適切なリスクアセスメントとそこから導き出される対策こそ、インシデントの発生を未然に防ぐ唯一の対処方法です。本記事では、特に発注者における建設リスクアセスメントについて解説します。

リスクアセスメントとは

ここでは建設プロジェクトにおいて、発注者が甚大な被害を被る可能性のある潜在的な危険因子=リスクを特定し、優先順位を付けながら適切な対策を講じるプロセスをリスクアセスメントと定義します。

建設プロジェクトにおける主なリスク

建設プロジェクトでは、特に以下のようなリスクに注意を払う必要があります。

品質リスク

発注者が所望する要求水準の未達、設計・施工上の瑕疵などによる品質低下のリスクを指します。

法的リスク

プロジェクトにまつわる全ての公法規制への抵触が該当します。

環境リスク

騒音、振動、悪臭、大気・水質汚染、有害危険物質漏洩、交通障害など、周辺環境への悪影響に関するリスクが含まれます。

コストリスク

資金・資材調達難、予算超過、為替変動、物価上昇など、地政学的リスクも関連した経済的リスクが該当します。

スケジュールリスク

意思決定時期等の重要なマイルストーンの認識の相違、関係者間で進めるタスク進捗のバラつき、工期遅延、資材の長納期化などのリスクが該当します。

安全衛生リスク

建設現場内外における人的・物的損害を与えるリスク。周辺通行者ならびに作業員等の工事に起因する人身事故が代表的なリスクとして挙げられます。

これらのリスク領域は相互に関連しており、包括的なアプローチが必要です。

建設リスクアセスメントが重要な理由

建設プロジェクトにおけるリスクアセスメントは、発注者にとって以下の理由から極めて重要な取り組みとなります。

不確実性の排除

潜在的な問題を事前に特定し、対策を講じることで、未然に前述の主たるリスクを防ぎます。具体的には、品質低下の防止やコストの超過抑制、工期遅延の回避、さらには建設現場内外の安全確保など、プロジェクトの根幹を成す要素を適切にコントロールすることが可能となります。

投資の保全・収益の確保

大規模な投資を伴う建設プロジェクトでは、予期せぬリスクの顕在化により事業計画が大きな支障をきたす可能性があります。適切なリスクアセスメントを通じて、投資の安全性を確保し、計画通りの収益実現を目指します。

意思決定の質向上

プロジェクトの各段階で発注者は数多くの重要な意思決定を迫られます。リスクアセスメントを通じて得られる情報は、より確実な判断を可能とし、プロジェクト全体の質的向上につながります。

ステークホルダーとの関係強化

投資家、プロジェクトオーナー、オペレーター、不動産エージェント、金融機関、設計者、施工者、地域社会など、様々なステークホルダーとの関係において発生しうるリスクを事前に把握し対策を講じることで、円滑なプロジェクト運営が可能となります。

企業地位の維持

建設プロジェクトで発生する問題は、発注者の社会的評価に直接的な影響を及ぼす可能性があります。リスクアセスメントを通じて、企業価値やブランドイメージを損なうリスクを事前に防止します。

建設プロジェクトマネジメントサービスにおける建設リスクアセスメント

ここまで建設リスクアセスメントの重要性と基本的な進め方について解説してきましたが、実際のプロジェクトではどのように実施されているのでしょうか。建設プロジェクトマネジメントサービスでは、専門のプロジェクトマネージャー(PM)が、以下のようにプロジェクトの各段階において適切なリスクアセスメントを実施します。

建設プロジェクトマネジメントサービスについて知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

「建設プロジェクトマネジメントサービス完全ガイド:基礎からわかりやすく解説」

➢ 基本計画段階

発注者の経営方針や施設コンセプトを十分に理解し、建設計画・コスト・スケジュールを包括的に検討します。この段階で、プロジェクト特有のリスクを抽出し、事業予算やスケジュールに適切に反映させます。

➢ 設計段階

品質確保とコストコントロールの両面からリスク管理を行います。設計内容の確認と予算との適合性の確認を随時実施し、将来的なリスクも考慮した品質・仕様の検討を行います。また、設計改善提案(VE)を通じて、予防的なリスク低減策を講じていきます。

➢ 発注・調達段階

コスト・品質・スケジュール・リスクを総合的に評価し、最適な発注方式を選定します。契約面でのリスク管理も重要な要素となります。この段階で構築する発注者・設計者・施工者を含めたプロジェクトチームが、その後のリスク管理の基盤となります。

➢ 建設工事段階

定期的な現場確認を通じて、以下のリスクを継続的にモニタリングします。

・品質

・安全衛生

・工程

・コスト

課題の早期発見と迅速な対応により、リスクの顕在化を防ぎます。

また、プロジェクト全体を通じて、関係者間での緊密な情報共有体制を維持し、状況の変化に応じた柔軟なリスク対応を可能とします。また、得られた知見は次のプロジェクトに活かせるよう、体系的に蓄積していきます。

まとめ

建設プロジェクトという長期的かつ巨大な投資を伴って多岐に渡るリスクが潜む事業において、いかにリスクアセスメントが発注者の利益保護に重要かおわかりいただけたと思います。さらにリスクの回避だけでなく、適切なリスクアセスメントはコスト削減やスケジュール短縮等、発注者の事業優位性の確立まで導くケースも多々ございます。

様々な国、地域、法令、商習慣下でプロジェクトを進めた実績のある弊社にぜひ一度ご相談ください。

Project Management Services – Plus PM Consultant

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