お客様の声

AJINOMOTO (MALAYSIA) BERHAD

巨大工場をゼロから生み出せ!ワンチームで実現したAJINOMOTO(MALAYSIA)の新工場に迫る。

1961年にマレーシアで創業されたAJINOMOTO (MALAYSIA) BERHAD。その創業以来60年稼働していた工場を移転する巨大プロジェクトが2019年10月に着工しました。計画の内容は、約18万8,000㎡の広大な敷地に、製造棟 2 棟と非製造棟 4 棟など、延床面積約5万4,000㎡の巨大工場を建設するものです。このプロジェクトを支えたのは、6名のローカルスタッフと2名の日本人CPMO(Chief Project Management Officer)からなるチームでした。新型コロナウイルスの流行に伴うロックダウンなどの困難を経て、2022年12月に新工場は無事に完成。開所式には地元ヌグリ・スンビラン州の君主のほか、在マレーシア日本国大使も参列されました。理想の新工場はどのように生み出されたのか、初代CPMOを務めた佐藤貴広様と、2代目CPMO の樋口貴文様にお話を伺いました。

事業主

Ajinomoto (Malaysia) Berhad

工事場所

Negeri Sembilan, Malaysia

用途

Factory, warehouse and office

延床面積

約54,000m2

構造

RC + Steel

階数

世界中のベストプラクティスを詰め込んだ工場を計画

味の素グループは世界各国に現地生産工場を構えられており、1961年にAJINOMOTO (MALAYSIA) BERHADを創業されました。その後、約60年にわたりマレーシアでの生産を支えてきた工場が移転されることになりました。最初にCPMOに就任された佐藤様は、「味の素グループが国内外で得たグッドプラクティスを集約した新工場を目指した」と話されます。

「例えば、ハラル準拠製品と独自素材の開発・生産機能を強化したり、年齢や性別を問わず従業員が働きやすい環境を作りました。また、将来的な工場のさらなる自動化を見越して必要なスペースをあらかじめ作っておくことも意識しました。お客様や社会に向けた取り組みとしては、燃料の天然ガスへの転換や、ソーラーパネルの導入などを行っています。ESG(環境・社会・ガバナンス)の中でも、特に環境を意識した工場となっていて、GBI(Green Building Index・マレーシアの包括的なグリーンビル認証システム)に認証申請中です。これらの取り組みをアピールするための見学スペースも設けており、訪れたお客様に味の素のファンになってもらうことを目指しています」(佐藤様)

AJINOMOTO (MALAYSIA) BERHAD
Director, Chief Technology & Innovation Officer, and Chief Supply Chain Officer
佐藤貴広様

佐藤様は味の素グループに入社後、国内外で生産技術開発や工場建設・増産プロジェクトを経験されています。マレーシアの新工場建設プロジェクトには2018年から関わり、翌年にCPMOとして現地に赴任されました。赴任した時点では、購入した土地を整地している段階でした。そのため、ゼロベースからプロジェクトをリードされてきました。

自ら考え、行動できる組織作りを目指して

AJINOMOTO (MALAYSIA) BERHAD
Chief Transformation Officer
樋口貴文様

プロジェクトは、CPMOと6名のローカルスタッフを中心に進められました。人選は、建設に関する経験値よりも、熱意や人柄を優先されたそうです。

「6名がそれぞれ異なるリーダーとしての役割を担いました。例えば、エンジニアリングに精通したスタッフを建設リーダーに任命しました」(佐藤様)

しかし、それまでは別の仕事をしていたメンバーが集まって1つの巨大工場を生み出すことは至難の業です。そこで、佐藤様が最初に意識されたことがチーム内のコミュニケーションの活性化でした。

「大型のプロジェクトを推進する上で一番困ることは、懸念事項の言いづらさから見過ごされた結果、取り返しがつかなくなってから表に出てくるケースです。何でもタイムリーかつオープンに相談し合える組織を目指しました」(佐藤様)

その基本として、「挨拶」を積極的に行われたそうです。

「私からどんどん挨拶したり、話しかけたりしました。あとは、些細なことでも感謝の気持ちを伝え、自分が間違っていたら素直に謝ること。単純だけど、風通しの良い組織づくりには大事なことだと思います」(佐藤様)

もう1つ、佐藤様が意識されたことがあります。それは、スタッフの成長につながるマネジメントです。

「言われたとおりにやるだけでは人は成長しません。こちらから指示を出すだけではなく、彼らに問いかけて、極力彼らの意見を聞くようにしました。そうすることにより、自ら考えて行動できる組織を目指して、コミュニケーションを重ねてきました」(佐藤様)

ただし、いくら優秀な人材が育ったとしても、建設プロジェクトに精通した仲間が必要です。そこで、早い段階でCM会社の採用を決定し、選考の結果、Plus PM Consultantに決まりました。

「私たちは設備や、生産プロセスについては精通しています。一方で、建物工事のノウハウはありません。そこをPlus PM Consultantに任せることによって、私たちの作業時間を捻出しようと考えました。最終的には生産プロセスに関することも色々とご相談するようになりました」(佐藤様)

また、今回の建設プロジェクトの特徴として、細かく入札を行う発注戦略を取ったことが挙げられます。

PPMC プロジェクトマネジャー
船元輝男

「大きな設備投資には社内の承認が必要です。しかし、建物工事に疎い私たちにはコストをイメージすることができませんでした。それについてPlus PM Consultantにご相談したところ、入札の選考を2段階に分ける方法を提案されました。会社に承認を取る前に一次選考を行い、出てきたコストを元に会社に予算を申請し承認を得るという流れです。この方法であれば、コスト感が明確になります」(佐藤様)

新型コロナウイルス感染症によるロックダウンが発生

2021年7月に佐藤様の後任として、2代目CPMOの樋口様が着任されます。

「私も味の素グループに入社後、国内外で様々な経験をしています。このプロジェクトでは、2021年から佐藤さんの後任としてマレーシアに赴任しました」(樋口様)

着任時、建物自体は99%完成していました。そのため、樋口様の役割は建物の工事が完了しているかを確認し、ゼネコンから工場を引き継いで設備を実装し、生産可能な状態にすることでした。
しかし、赴任されたのは新型コロナウイルス感染症によるロックダウンの最中。プロジェクトは99%のままストップしてしまいます。

CPMOの仕事は、予算とスケジュールを守ることです。しかし、ロックダウン中は動きたくても動けません。着任した当初は、毎週のように予定を後ろ倒しに組み直してばかりでした」と、樋口様は当時を振り返ります。

そんなときに、経営陣から『1週間ごとに計画を後ろ倒しにしても埒が明かない。いっそのこと、大幅に遅れると宣言すればいい』と助言されたことで、ロックダウン中でもやれることに集中できるようになったそうです。
例えば、当時の課題の1つに、プロジェクトメンバーとそれ以外の工場スタッフとの間に温度差がありました。プロジェクトのゴールは新工場の完成ではなく、スタッフたちが新工場を新たな仕事や生活の場として存分に使うことです。それぞれの部門の担当者が旧工場から新工場への移転準備を能動的に行うようにするためにはどうしたらいいか、頭を悩ませたといいます。

「いかに当事者意識を持ってプロジェクトに参画してもらうかを考えました。例えば、新しい工場に移ることを“visit the new site.”と言うスタッフがいたら、“visit”じゃなくて“live”なんだと伝えました。ロックダウンによるスケジュール遅延の結果、こういった準備に時間をかけることができた側面もあります」(樋口様)

こうしてプロジェクトメンバーは、ロックダウン中も士気を落とすことなく、その時にできることを着実に進めていきました。

「実を言うと、赴任当初はプロジェクトメンバーの少なさに驚きました。東京ドーム4個半分のプロジェクトを、比較的若い6名のローカルスタッフとCPMOで回しているのです。ですが、対話を重ねていくとすぐに、力量に恵まれたチームであることが分かりました」(樋口様)

What a great job we have done!

こうして、新工場は2022年12月に無事開所しました。
最後に、現在の率直な感想をお二人に伺いました。

「ほっとしたけど身が引き締まる思いです。最初は、一緒に仕事をしたことがないメンバーとこれだけのことをやり遂げられるのかという不安がありました。Plus PM Consultantのフォローもあって新工場が無事に完成して本当にほっとしました。一方で、『あそこは器だけだよね、良いところは』などとは言われないように、工場のソフト面をしっかりと良いものにしていかなければと思うと、身が引き締まります」(佐藤様)

「これまで、増産として新しく工場を作るプロジェクトは手掛けたことがありましたが、今回は移設という、初めての経験をすることができました。増産の場合、既存工場のサービスを活用しながら徐々に機能や規模を拡張することができます。しかし、移設の場合はすべての機能を一度に新しく準備する必要があります。これを具現化することは本当に難しいし、貴重な体験になりました」(樋口様)

また、お二人は、あらためて振り返ってみると、今回の6名のローカルスタッフの成長なしにはプロジェクトの成功はあり得なかったと口を揃えて言います。

「新工場ができあがってから様々な人々が見学に来られます。なかには非常に立場のある方が来られることもありますが、そんな時も、笑顔で、自信を持って工場の説明をしているメンバーの姿を見ると、彼らがいかに自発的にこのプロジェクトに取り組んできたのかが分かります。また、見学に来られた人から『みんな自信に溢れているね』と仰ってもらえると嬉しいですね」(佐藤様)

「私はあえて佐藤さんと違うことを言いますが、彼らはまだ自分たちがやったことの凄さをちゃんと理解していないと思うんです。年度末のレビューの際にメンバーに言ったことは、“What a great job we have done!”です。自分たちの凄さを自覚させて、さらに一歩先まで成長していってほしいです」(樋口様)

新工場はまだ稼働したばかりです。このプロジェクトで成長したメンバーたちを中心に、さらなる発展を遂げることでしょう。

担当者からプロジェクトを終えて

Plus PM Consultant Sdn Bhd
プロジェクトマネージャー
船元輝男

このプロジェクトの経験は弊社にとって、そして私にとっても、一言では語れないほどとても大きなもので、得るものがたくさんありました。お客様もプロジェクトを通して成長できたと仰っていますが、弊社もこの経験から組織として成長することができました。

弊社には日系プロジェクトの依頼が多いのですが、ときに日本人だけで物事を決定されることもあります。しかし、AJINOMOTO (MALAYSIA) BERHAD様はローカルライズすることを大切に考え、このプロジェクトでは必ずローカルスタッフを巻き込んで決定のプロセスを踏まれたことに感銘を受けました。マレーシアで60年という長い歴史のあるお客様のプロジェクトに携わることができたこと、また無事にプロジェクトが終えられたことを大変嬉しく思います。

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